第001話 Zua−ズア


01 Zua−ズア

 Zua−ズア…
ズア001話01 Zone Unit Analyzerの略…
 謎の超兵器…
 オリジナルbフ0番からラストbフ100番まで存在し、1番から9番までの一桁bニ90番から99番までのラストオーダーズには特別な力があるとされている…
 ラストbフ100番は存在自体が幻とされ、オリジナルbフ0番には全ての源がつまっているとされている…
 世界はズアを手にした一握りの少年達に支配されていた…。
 ズアは何故か20歳になってしまうと…成人してしまうと使えなくなってしまう…
 子供の間だけ、使える超兵器…
 それがズアだった。
 ズアを手にした少年達は行方不明の0番のズアを追い求める。
 0番にはそんな規制はないのだから…


02 ヨハンとおばあちゃん


「ヨハンー、ご飯よー」
「はーい、今、行くよ、おばあちゃん」
 ヨハンはおばあちゃんと二人暮らし…。
 他に家族はない…二人だけの生活だ。
 おばあちゃん…と言っても見た目はかなり若い…20代…くらいの年齢に見える。
 実際には60を超えているのだが、誰もその年齢を言っても信じてもらえない…
 だから、ヨハンとは祖母と孫と言われても信じる人は殆どいない…
 そのため、外ではおばあちゃんの事を【お姉ちゃん】と呼んでいた。
 その方が面倒な事にならないからだ。
 ヨハンの両親…
 おばあちゃんから二人とも死んだと聞かされていた。
 死因は教えてくれない…。
 まだ、ヨハンが小さい頃、死んだとだけ聞かされた。
 おばあちゃんは多くを語らない…
 だけど、それならそれで良いと思っていた。
 おばあちゃんと二人、慎ましく生きていければそれで良い…。
 ヨハンはそう思っていた。
「何だか、外が騒がしいね…」
「良いかい、ヨハン、今日は外に出ちゃ駄目だよ」
ズア001話02 「?…良いけど、何かあるの?」
「私達の生活を脅かす悪意が近づいて来ているみたいだよ…」
「悪意?」
「そう、悪意さ。欲望に狂った醜い意志さ…」
「大丈夫さ、俺がおばあちゃんを守ってやるよ」
「そうかい、ありがとうね、ヨハン。お前は優しい子だね」
「何てったっておばあちゃんの孫だからね。正義感はたっぷり教育されているよ」
「ふふっ…そうだね…。お前には話しておいた方が良いかも知れないね…」
「何の事?」
「良いかい、これから話す事はお前の運命を変えるかもしれない大事な話だ。心して聞いとくれ」
「おばあちゃん…」
 ヨハンはおばあちゃんに特別な話とある物を譲り受けた。
 そして…
「もし、私と別れるような事になったら、それらを持って、エレニアを探して一緒にお逃げ。私の事は気にしなくて良いから…」
「何言っているんだよ、おばあちゃん、俺、おばあちゃんも守るって」
「これからお前のとる行動如何によっては世界の運命が変わる…。一時の感情に左右されちゃだめだよ」
「そんな…」
「大丈夫、お前ならエレニアとだってやっていけるよ」
「俺、エレニアなんて知らないよ、会ったこともないし…」
「お前とエレニアは魂で惹かれあっているからすぐにわかるさ。説明するまでもないよ…」
「何言ってんだよ、おばあちゃん、俺はおばあちゃんさえ居れば…」
「後生だよ、ヨハン」
「おばあちゃん…」
 ヨハンはおばあちゃんとの別れの時が迫っている…
 そんな不安を感じていた。


03 別れの時


 そして、その時はすぐに訪れた。
「ここか、探したぞ、シャハラザード、0番を何処に隠した?」
 数人の男達が家に殴り込んできた。
「おやおや、誰かと思えば、かつての所有者の一人、ルーカス…だったかい?当時の支配者様の一人が今じゃ年下の子供の使いっ走りかい?」
「黙れ、俺だってオリジナルb手にしていれば、こんな事には…」
ズア001話03 ルーカスと呼ばれた男が悔しそうに顔を歪める。
 おそらくこの男は20歳を過ぎてしまったのだろう…。
 だから、支配者という座から引きずり下ろされたのだ。
 今は新たなる支配者の元で使われる身になったのだろう…
 時は残酷にこの男から支配権を奪ったのだ。
「0番をお探しだったねぇ、…残念ながら数年前から行方不明さ。ある男に奪われてねぇ…」
「嘘をつくな、貴様のその姿がまだ、0番の加護を得ている何よりの証拠だ。俺は騙されんぞ」
「おやおや、それは、それは…」
「力づくでも良いんだぞ」
「出来るのかい?0番の加護を受けているかも知れない私に力を失ったあんたが…」
「くっ…」
 思うように手が出せないルーカス。
 おばあちゃん、シャハラザードの方が一枚も二枚も上手だった。
 だが…
「使えない男だね、ルーカス…」
 突然、声が響き渡る。
 シャハラザードに指示されてクローゼットに隠れているヨハンにもその声が聞こえた。
「何だ…今の声は…」
 小声でつぶやく…
 機械の音声の様な声だった。
「誰…かしら…」
 シャハラザードの顔色も変わる。
 ルーカスとは勝手の違う相手だと本能的に察知しているのだ。
「僕の名前はミケロ…そこにいるルーカスから74番を譲り受けた者さ…」
 機械音が鳴り響く。
「お下がりをもらった坊やが何かご用かしら?」
「僕を、そこの男と一緒にしない方が良いよ…僕は既に25と35番…それに76番の領域も手に入れている…僕は無敵さ…」
「…無敵…ねぇ…74番、25、35、76番…どれも中間b謔ヒ…大変よねぇ〜一桁b窿宴Xトオーダーズとの領域の差は単純計算しても10倍の差があるって言うし…大方、他の中間b燉フ域を手に入れ出して手に負えなくなって来たからオリジナルbフ0番に手を出すことにした…そんな所かしらね…?」
「解っているんなら話が早いよ。僕に0番を頂戴よ。そうすれば一気に形勢は逆転する。僕が最強さ」
「…はいそうですかって渡すと思って?オモチャじゃないのよ。坊やに0番が扱えるとはとても思えないわね」
「言ってくれるね…だけど、僕は気付いているよ。貴女は0番を大切な人間に渡した…。だから、貴女を人質に持っていればそいつは必ず、貴女を助けるために現れると…」
「それはどうかしらね…あの子には私の事は忘れなさいって伝えてあるしね…案外、私の知らない土地でのんびりと暮らしているんじゃないかしら?」
 そんな訳はなかった。
 今すぐにでもシャハラザードを助けに入ろうともがいていた。
 が、シャハラザードがこっそり暗示でもかけたのか身体が動かない…。
 助けに行きたいのに声も思うように出ない。
「その女を連れてこいルーカス。その女は0番を手に入れる良い材料になる」
「ちっクソガキが…」
 小声でルーカスがぼそりと悪口を言う。
「聞こえているよルーカス」
「ぎあぁぁぁぁ、し、失礼しました」
「君は僕の支配下にあるという事を忘れてもらっては困るよ」
「坊や、一つだけ忠告しておいてあげる。力での支配は力によって奪われるのよ。ルーカス君が坊やにズアの力を強奪されたように、あなたもまた、別の誰かに力を奪われるわ」
「…お説教は良いよ。僕は僕のやり方で全てを支配する」
「年寄りの忠告は聞いておくものよ…」
「貴女はお年寄りに見えないのでね…」
「ありがとう、一応、褒め言葉として受け取っておくわ…」
「…連れてこい…」
 こうして、シャハラザードは攫われて行ってしまった。
 後になって身体が動く様になったヨハンは後悔する。
 始めから隠れていなければ良かったと。
 それなら、おばあちゃんと一緒に居られたかも…
 そう、思った。
 だが、その時、シャハラザードの教えが頭に浮かぶ。
 人生というのは選択肢の連続よ。
 一つ一つの行動に責任がつきまとう…
 よく考えて行動なさい…と。
 ヨハンは立ち上がり、これからの行動を思案するのだった。


04 ヨハンの行動


 ヨハンはまず、自分の存在をミケロに気付かれてはならないとして、住処を出て行く事にした。
 旅立ちの時だ。
 シャハラザードはエレニアを探せと言っていた。
 だが、ヨハンはエレニアを見たこともない…。
 会ったら解ると言われたが、今の時点では全然、見当もつかない…。
 だから、まずは、おばあちゃん、シャハラザードの奪還。
 これが最優先と考えた。
 相手はズアと呼ばれる謎の力を所有するミケロという子供をトップとする組織。
 この世界を支配しようと勢力を伸ばしている組織だ。
 最大の組織ではないようだが、それでも強大な組織という事に違いはない…。
 自分はたった一人なので、当然、組織力でも負けていて、謎の力・ズアもあるのでは迂闊には近づけない。
 失敗するという事は破滅を意味する。
 シャハラザード奪還に必要な事…
 それは奴らが追い求めている0番と呼ばれるズアを手に入れる事…。
 彼女からは3つのかけらを渡されている。
ズア001話04 6面ダイス…サイコロに似た正立方体の小さな物体が一つ…
 ビー玉のような小さな球体が一つ…
 ピラミッドを小さくした様な四角錐の物体が一つ…だ。
 この三つは手のひらにおさまるような小さなかけら…
 全部で10個…これらのアイテムを集めなくてはならない…。
 0番のズアは10の次元を意味する10種類のアイテムに分けて各地に隠していたという…
 何かあった時のために3つだけ家に残しておいたのは不幸中の幸いだった。
 後、7つのアイテムを揃えれば、オリジナルbフズアは目覚める…
 追っ手を振り切りながらのアイテム収集をする事にした。
 現在、持っている3つのアイテムを駆使すれば、シャハラザードがヨハンに対してした暗示をかけるくらいの小手先の事は出来る…。

 アイテムを使いながらの命がけの鬼ごっこが始まった。
 相手は武装した組織。
 まともに相手にはしていられない…
 下手に反撃すれば返り討ちにあうのは目に見えていた。
 ヨハンの元の住処の近所の人達の証言からシャハラザードと一緒に住んでいた事が既にバレていた。
 手配書が回り、ヨハンは隠れながら4つ目のアイテムの隠し場所のある樹海を探索した。
 通常兵器と思われる兵器についてはヨハンは所有する3つのアイテムの力を駆使して上手くかわしていった。
 だが、攻撃ヘリとヘビをあわせた様な兵器、砲台が歪な形をした戦車など明らかに普通の兵器と違うものが登場し出すと簡単には動けなくなった。
 樹海の木の間に何とか身を隠すのが精一杯だった。

 その時…
「こっちだ…早く!」
 という声がした。
 声のする方を見ると数人の男性が手招きしていた。
 ヨハンはその声に従い、その男性達の元へ移動した。
 

05 エレアという少女


 男性達に着いて行くと洞穴が隠れるようにあった。
 男性達の隠れ家らしい…。
「よろしく、俺はチャンだ」
ズア001話05 男性達のリーダーらしき人物が声をかける。
「よろしく…あの、俺、ヨハンって言います」
 下手に知らない人物に名前を名乗るのは危険だと思ったが、助けてもらったので、信用して名乗る事にした。
「やはり、そうか…手配書の…」
「あの、…俺…」
「心配しなくて良い…俺たちも奴らとは敵対している…俺は3年前まで56番のズアを所有していた…だから、この状況も何となくわかる…」
「そ、そうなんですか…」
「ズアの所有者達は日を追う毎に凶悪化している。今じゃ、所有者同士、領域の奪い合いまではじめている。3年前には無かったことだ…」
 チャンはズアの所有者達はその圧倒的な力を手にした事で傲慢になっていくという…。
 それは、所有者が未成年、精神的にまだ未熟な者達が不釣り合いである強大な力を持ったことによる弊害だとの事…
 チャン自身もズアの持つ危険な魅力に取り憑かれ日に日に傲慢になっていった。
 だが、チャンのまわりには損得抜きで付き合ってくれる仲間がいた。
 だから、ズアの力に飲まれることなく、自らズアの力を放棄することが出来たという…。
 その仲間と共にズアの力に抵抗する人間の力になろう…
 そう決めたらしい…
 出回った手配書を見て、ひょっとしたら、ヨハンはズアの脅威にさらされているのでは?と思い、接触を試みたという事だった。

 始めは少し疑心暗鬼気味に見ていたが、チャン達の人柄を見ている内に少しずつ打ち解けていった。
 情報も少しずつ教えてもらえた。
 そして、彼らの口から一人の少女の名前があがった。
 その少女の名はエレニア…
 その名前はシャハラザードから聞かされた名前と同じ名前だった。
 その少女を獲得する事がズアによる不毛な戦争を終わらせる一番の近道だと聞かされた。
 謎の少女、エレニア…
 彼女はまだ、ヨハンの前に姿を現さない…
 だが、彼にとっても重要な人物になるであろうことが解った。
 最初はどうでも良いと思っていたのだが、この戦いを終わらせるキーパーソン…エレニアを探す事も必要な事なんだと思った。


06 Zua−ズアとは…


 チャン達と行動を共にして一つ、また一つとオリジナルbフズアの起動に必要なアイテムを集めて言った。
 彼らとの雑談から、シャハラザードからも聞いていないZua−ズアというものの事をある程度聞くことが出来た。
 Zua−ズア…
 Zone Unit Analyzer…
 簡単に言ってしまえば、領域ユニットの分析装置だという。
 10次元空間上にそれぞれのズアの所有する領土、領域に数々の超兵器と転送装置が置いてあり、それをこの世界に存在するズアの分析装置で解析し、所有者の意のままに操るというものだ。
 ズアの領域にあるものはそれぞれのズアの分析装置の所有者のために機能し、その分析装置は成人すると脳波の関係で、操れなくなるという…。
 当然、ズアの領域が広い程、多くの超兵器を所有する事になる。
 多少、例外などもあるが、基本的に、中間bフ10倍の領域を一桁b窿宴Xトオーダーズのズアは所有し、オリジナルbOとラストbP00に至っては100倍の領域を持つとされている。
 あくまでも領域なので、広ければ強い超兵器があるという訳でもないのだが、領域が広ければそれだけ多くの戦力を保有することになる。
 大は小を兼ねるというやつだ。
 さらに言えば、中間bナは許容量不足で入らない超兵器も一桁aAラストオーダーズ、オリジナルaAラストbノ入っている可能性も否定出来ないのだ。
 だからこそ、ズアの所有者達はより広い領域を求める。
 最近の所有者同士の領域の奪い合いもそうして生まれた抗争だった。

 ズアの所有者達はその超兵器を所有することで自分は無敵だと思いこむと同時に、他の所有者達の事を疎ましく思うという…。
 自分以外にこの巨大な力は必要ないと…。
 中途半端な力を手にした者ほどこの思いは強く、中間sッ士の醜い領域の奪い合いはより、上位にいる一桁b窿宴Xトオーダーズに対する恐怖から少しでも逃れるために、自分の領域を少しでも広くとの気持ちからはじまっている。
 大きな力を持つが故に、それ以上の大きな力を無意識に恐れているのだ。
 その恐怖から逃れるために、無意識に強がり、自分の力を誇示し、他の所有者の領域を奪い、安心する…。
 所有者の心の弱さが他の所有者の領域侵犯という行動を起こさせる。
 それでも安心できないミケロのような小心者が100倍の容量を持つ、オリジナルbフ略奪を計画するのだ。
 強い力というのはそれなりの代償を支払って初めて機能する。
 大きければ大きいほどその代償も大きくなる。
 小心者達はその事には気付かず、己の分不相応な力に手を出し、破滅していくのだ。
 その事はヨハンにズアとは、一体、何なんだと考えさせられる様な事だった。


07 次なる地へ


 そして、短い付き合いではあったが、ヨハンは5つ目のアイテムを手に入れた時にチャン達に別れを告げた。
 理由は、ヨハンと行動を共にしていたメンバーに多数の死傷者が出たからだ。
 自分と一緒にいたら危険な事が増えるだけだと、去ることを決めたのだ。
 夜中に黙って去ろうとした時、チャン達も起きていて…
「行くのか?」
 と言ってきた。
「はい、…今までありがとうございました。このご恩は忘れません」
 歯を食いしばり別れの辛さに堪えるが…
「あれは、お前が悪いんじゃない…みんな納得して戦っているんだ。悪いのはズアの所有者…いや、ズアそのものだ。…あんなものがあるから人は狂うんだ。だったら、無い方が良い…俺たちはズア撲滅のためにこれからも戦う」
 と言ってくれた。
 その瞬間、ヨハンの頬を涙が伝う。
「あり…ありがとう、ございましたぁ〜っ」
 力の限り叫んで、そのまま走り去って行った。
 まだ、戦いは始まったばかり…
 戦っていれば、いずれまた、チャン達と再開する時も来るかも知れない…。
 だが、チャン達が掴んだ情報によれば、74番のズアの所有者ミケロは他の所有者に殺されたと言う。
 その時、シャハラザードは新たなるズアの所有者に連れて行かれた可能性が高いという事だった。
 今まではチャン達が戦っていたのが、ミケロに属する集団も含んでいたため、共闘していたが、ヨハンが目標にしていたミケロは倒れて、新たなる支配者に移ってしまった。
 混沌としている今の状況では何が敵となるか解らない…
 別のズアの所有者と戦っているチャン達との共闘は出来ない…。
 今は、去ろう…
 自分はシャハラザード救出のために動いている…
 世界のために戦っているチャン達とは少し、目的が違うからだ。
 だが、必ず、シャハラザードを救出して、チャン達を助けるために帰って来る…。
 その事を誓うのだった。
「チャンさん…死なないで…」
 その事だけを願い、ミケロの元支配地域を出た。


08 エレアという少女


 一人きりに戻ったヨハンだが、ミケロがばらまいた手配書は有効で、オリジナルbフズアを持っていると噂が広まっていて、様々な敵から襲われるようになり、集めているアイテムの力で何とか切り抜けてはいるが、所詮、本来の力、bOのズアの力には遙かに及ばない僅かな力では匂いや体温を消して、センサー類に引っ掛からないようにする事などがやっとだった。
 命からがら逃げ出す事も多く、その度に傷ついていった。
 それでも気力を振り絞り、6つ目、7つ目と手にしていったが、8つ目がある湖の畔で力尽きてしまった。
 無防備に倒れてしまい、このままでは見つかるのも時間の問題という状態になってしまった。
 意識はそこで飛び、再び気付いた時には温かいベッドの上だった。
「…ここは…?」
「大丈夫ですか?」
「どうしてここに…?」
「あなたは湖で倒れてました」
「君は…?」
「エレアと言います…」
ズア001話06 「エレニア…じゃ…ないの…?」
「エレア…です…」
 少女はエレアと名乗った。
 似ているがエレニアという名前ではない…。
 やっとエレニアに会えたつもりにはなっていたのだが、疲れているからか、勘違いだったようだ…。
 聞くところによるとエレアと名乗るこの少女は湖の近くに一人で住んでいるという。
 華奢な体つきの様にも思うが、ヨハンをベッドまで運べる辺り、意外に力はあるのかも知れない。
 そう、思ったのだが、その疑問はすぐに解決した。
「それは…?」
 畑仕事を手伝わせている巨大な人型のロボットを見たヨハンはそれが何なのかをたずねた。
「オート・ヘヴィー・ドール…又はグランマスタと言います。97番さんにお借りしました…」
 97番…恐らく所有者の一人の事だろう…
 97番と言えば、ラストオーダーズになる…
 今まで、ヨハンを襲ってきた者よりも格上の存在となる。
 それにしても、ラストオーダーズにズアの力の一部を貸してもらえるこのエレアという少女は一体…
 謎は深まるばかりだが、とりあえず助けてもらったことには感謝をしめすことにした。

 エレアは、とても親身になって、傷ついたヨハンを介抱してくれた。
 会話はあまり得意ではないのが解ったが、それでも、何とかヨハンとコミュニケーションを取ろうとしゃべろうと努力しているのが、よく解った。
 その一生懸命さが可愛かった。
 エレアの手当の仕方が良かったのか、思ったよりもかなり早くヨハンの様態は回復していった。
 もう、立って用を足すくらいは出来る様にまではなっていた。
 その頃には健気なエレアに対して恋心のようなものを抱いていた。
 ずっと、おばあちゃん、シャハラザードとの二人暮らしで周りにあまり年の近い子供もいない状態で育っていたので、これが、初恋だった。
 初めての感覚にヨハンは戸惑った。
 どう接して良いかわからないからだ。
 好きな子とどういう話をして良いか解らないのだ。
 エレアの方も口下手。
 次第に沈黙でいる事が多くなった。

 気まずい…
 とは思うのだが、言葉が出てこない…
 出てくるのは…
「あの、あのロボット、グランマスタだっけ?…か、格好いいね…」
ズア001話07 とか
「仲間にこういう人がいたんだ…」
 とか色気のない話ばかりだった。
 エレアは…
「あ、あなたの事も聞きたいです…」
 と言ってうつむいたりしていた。
 エレアの方も意識しているのだろう…。
 無理もない、ずっと、湖での一人暮らしなのだ、近い年頃の少年など今まで居なかったのだろう…。

 そういえば、97番も現役であるのであれば子供のはずである…
 エレアと97番との関係も気になるヨハンだった。

 しばらく、シャハラザードの事やオリジナルb解放するためのアイテム集め、別れたチャン達仲間の事を忘れていた。
 気恥ずかしさはあったが、それだけ、居心地が良かった。
 だが、傷が癒えていく内にそれらの事も思い出して来た。
 切っ掛けは何となく見てしまったエレアの部屋に8つ目のアイテムがあったからだ。
「え、エレアさん…これは?」
「え?あ、はい…シャハラザードという人が私に預けて…」
「それ、おばあちゃんだ…」
「そ、そうなんですか?」
 止まっていた時が再び動きだそうとしていた。
 何をやっていたんだ、自分は…。
 こうしている間もおばあちゃんは…
 そう思い、旅立ちを決意するのだった。

「え、エレアさん…俺…」
「行かれるのですね…」
「はい…行かないと。ありがとうございました」
「また…お会いできますか」
「はい…また、俺も会いたいです」
「お気をつけて…」
「はい…エレアさんもお元気で…」
「ヨハンさんもお気をつけて…」
「はい、行ってきます」
「…行ってらっしゃい」
 最後はビシッと決められた。
 居心地の良い場所だったが、長居はしていられない。
 ヨハンは8つ目のアイテムを受け取り、旅立つのだった。

 見送るエレアの後ろに影が一つ…
「…行ったね…」
「97番さん…いらしてたんですか…?」
「まぁね…グランマスタを通して、あのヨハンって子を見てた…」
「…良い方だと思います…」
「…そうかもね…でも、まだ、運命にあらがえるだけの力を手にしてない…」
「…そうかも知れませんが、あの方ならきっと…」
「手に入れると良いね…」
「はい…」
 エレアと97番の少女はヨハンの後ろ姿を見送った。


09 嵐の予感…


 ヨハンが去ってエレアと97番ディアナはエレアの家でお茶を飲んだ。
ズア001話08 軽く、ヨハンの事を話をしていた。
 ディアナの予想では、彼がグランマスタを見たのはこれがはじめてであろうという事だった。
 それは当たっていた。
 ヨハンは今まで、ズアの所有者の放つ刺客と戦って来たが、グランマスタの様な人型ロボットは出てきていなかった。
 グランマスタは何もディアナ専用のマシンではない…
 グランマスタやオート・ヘヴィー・ドールはあくまでも人型ロボットの総称であり、固有名では無かった。
 ヨハンが見たディアナのグランマスタの固有名はゲート・キーパーという。
 ゲート・キーパーは彼女の主力グランマスタではなく、あくまでもサブ的な役割をするものであった。

 ヨハンの前に敵のグランマスタが現れる時、戦いは本格化するだろう…。
 今までの戦いはこれから始まる戦いの予行練習のようなものに過ぎない…。
 一桁b窿宴Xトオーダーズはヨハンがこれまで相対してきたような中間bニはひと味もふた味も違う…。
 嵐はこれからやってくるのだ。
 二人はヨハンの身をあんじるのだった。


10 オートマトン


 ヨハンは寂れた村にやってきた。
 廃村と言ってもおかしくないほどである。
 人の気配は殆どないと言っていい…
 わずかな人の気配は全て小さな子供達のものだった。
 みんな隠れて生活をしていて何かに怯えているようだった。
「何かあったの?」
 質問するヨハンにそっと近づき、身体をペタペタとさわり何故か安心する子供達。
 何かを区別しているようだった。
「お兄ちゃんは…オートマトン…じゃないよね?」
「オートマトン?」
「…アランが作った殺人機械だよ…」
「…アラン?」
「平気で人殺しをする酷い奴だよ…大人はみんな…ぐすっ…みんな、アランに殺されちゃった…」
 涙ぐみ悔しそうに答える男の子。
 他の子も悔しさが顔ににじみ出ている。
 アランとは恐らくズアの所有者だろう…

 だが、アランという存在がヨハンの敵の名前を思い出させる。
 アランという名前はミケロを殺した所有者とは別の名前だった。
 後から連絡を受けた、チャン達の情報ではカインと言っていたはずだ。
 番号は69番のズアの所有者で、元々、12番のズアの領域を奪っていた少年でミケロを殺した事によって彼の74番と所有していた25、35、76番のズアの領域も手に入れているはずの難敵…。
 領域の数ではミケロが勝っていたにも関わらず負けたのはカインは悪知恵を働かせてだまし討ちにしたからだと言われている。

 つまり、アランについてはヨハンとは関わり合いの無い相手という事になる。
 だが、そういう事にはなるのだが、子供達の話を聞く限りでは…アランという少年も放っておいては危険だというのが理解出来た。
 チャンは言っていた。
 ズアの所有者達は次第に力に溺れ、傲慢に、非情に、悪質に、なっていくと…
 だとしたら、このアランも野放しには出来ない…。
 ヨハンはそう思った。
(おばあちゃん…おばあちゃんなら…この子達を見捨てていけ何て言わないよね…。ゴメンね…また、寄り道してしまうかも知れない…許せないんだ…ズアという凶器を持った悪意のある人間の無法が…)
 ヨハンは子供達を安全な場所に運び、手に入れた8つのアイテムで迎え撃つ事にした。
 オートマトンは夜に現れるという…。
 ヨハンは子供達を寝かせ、襲撃に備えた。
 だが、オートマトンは思いもよらない所から出現した。
 ヨハンがかくまった子供達…
 その子達こそがオートマトンだったのだ…
ズア001話09 アランは子供達の意識を残したまま、オートマトンに改造したのだ。
 子供達の手によって、自らの親達を殺害させたのだ。
 人を人とも思わない鬼畜の所行だった…。
「外道…」
 アランという所有者に対して怒りがこみ上げて来る…
「…オクタゴン・トラップ…」
 ヨハンは8つのアイテムで八角形の膜を作り、その膜を子供達…オートマトンに被せていく…
 すると、子供達は眠るように息を引き取って言った。
 最後まで迷った…
 殺すことはないと…
 だが、このまま、惨たらしく生きているよりはと…
 自らの手を血で染める決心をした。
 これまで、ズアの所有者達の刺客との命の奪い合いはしてきたつもりだ…
 だが、こんな無垢な魂を相手にしたことは無かった…。
「うっ…うぉおぇぇっ…」
 自らしてしまった行為に吐き気を及ぼす…
 狂っている…
 アラン達ズアの所有者達だけではない…
 ヨハンも…
 自分も狂っている…
 そう思った。
 そうなのだ…ヨハン自身もズアを解放させようと動いている…。
 人助け…
 おばあちゃん…シャハラザードを助けるためとは言え、危険なものだと承知でズアを求めている…
 ズアを手に入れるしか方法が無い…
 でないと助けられない…
 そういう理由をくっつけてズアの解放を願っている。
 自分も許せない…
 だけど、今は…
 繰り返しこの問答を続ける…。
 廃村でのオートマトン戦…
 この戦いはヨハンの胸に大きな傷をつけるには十分過ぎた…。


11 9つ目のアイテム 海底からの大脱出


 オリジナルbOのズアを解放するために必要な10のアイテム…
 その9つ目のアイテムは海にあった。
 生身の人では潜れない深海の底にである。
 最後のアイテムもそうだが、この9つ目も他の8つのアイテムの力を駆使しないと取れないようになっていたのだ。
 そのため、目的地としては最後となっていたのだ。
 8つのアイテムを使えばエアスポット、空気のフィールドを作る事が出来た。
 そのまま、海に潜っていく。
 だが、この海もまた、別のズアの所有者が支配する危険地域だった。
 元漁師の人の話だと、ルネという所有者が支配しているという。
 ルネは海の生物に似せたロボット、マリーン・アーミーを使うという…
 ルネに見つからない様に慎重に深海へと進んでいく。
 辺りを探りながら慎重に…慎重に…
 見つかったら戦闘になり、8つのアイテムで空気を作り出しているヨハンにとっては圧倒的に不利な状況となる。
 途中、鮫やイカなどにも会ったが、何とかルネに見つからず、9つ目のアイテムを手にする事が出来た。
「やった…これで、後、一つだ…」
 そう喜んだのもつかの間…
「…ご苦労様…そんな所にあったのね…ずっと探していたのに、全然見つからないんだもの…面倒臭いから探すのはあなたに任せたのは正解だったわ…初めまして、私はルネ。もう少しでそろう、0番を奪いに来ました」
 深海魚型のマリーン・アーミーから声がする…
ズア001話10 中には少女が乗っている様だ。
 踊らされていたのだ。
 無事にアイテムを取ることが出来たのではなく、アイテムを見つけるまで見逃してもらっていたのだ。
「な、何だ、お前は…」
「だからルネと名乗ったでしょ。一応、あなたのおばあちゃん、シャハラザードを攫ったカインの彼女って事になっているわ」
「カインの…」
「やっぱり、カインの情報は漏れていたみたいね。でも、そっちが解るって事はこっちにだって解る可能性がある…違うかしら?」
 恐らく、チャンがカインの所にスパイを送り込んだように、チャンの所にもスパイの様な者を忍び込ませているのだろう。
 カインはミケロをだまし討ちにするような輩である…。
 スパイの一人や二人、いたとしてもおかしくない…。
「お前も所有者か…」
「…仮のね…」
「仮?」
「そう、仮…このマリーン・アーミーは元々12番の所有者の力だった…所有者じゃない私がカインに貸してもらっているのよ」
「カインに俺を殺せと言われたのか…」
「…彼はあなたになんか興味ないわ。0番が欲しいだけ…今まで、生かしておいてあげたのは0番のアイテムを集めさせるため。9つ目まで集めれば後は1つだけ…。最後のアイテムを手にしてしまったらあなたは0番の力を手にしちゃうでしょ。その前に…9つ目のアイテムが揃った段階で奪ってしまえば良い…そう考えているのよ…」
「………」
「だけど、さすがに9つ目までアイテムが揃っているとどんな力が使えるか解らない…そこで、私の出番って訳。彼は臆病な性格だから、危険かもしれない場所に自ら関わるような事はしない…。酷い彼氏でしょ〜」
「何で、そんな男についているんだ」
「…決まっているじゃない…大きな力が手に入るからよ。そして、私があなたに直接仕掛けるのはカインにその力を渡すため…じゃないけどね。その力、0番の力が手に入れば、カインだって目じゃないわ。私が支配者になるのよ」
「渡さないぞ…絶対に」
「渡さない…?どの口がそう言うのかしら…?ここは深海なのよ。力を使えば、あなたの生命を維持している空気のフィールドは霧散する…うふふ、チェックメイトってやつね」
「そいつはどうかな…」
「深海の中で私に勝てると…」
「幸い、この空気の壁の中の気圧は地上と変わりない…だから…」
「何よ…」
「エア・シュート!!」
 ヨハンは9つ目のアイテムも利用し、空気の壁を一気に海上まで急上昇させた。
「逃がすか…追いなさい!!」
 ルネは他のマリーン・アーミーも呼び寄せ、追いかける。
 深海の水深1万メートルからの大脱出だった。
 海の中ではルネのマリーン・アーミーには勝てない…。
 ならばせめて海上へ…
 ヨハンのスタートダッシュがあったため、100メートルくらいはリードしていたが、スピードで言えばマリーン・アーミーの方が上、徐々にその差を縮められていった。8000メートルのあたりでは10メートルくらいまで縮められていた。
 このままでは、すぐに追いつかれてしまう。
 だが、上手く、海流に乗ることが出来たヨハンは一気に5000メートルくらいまで進める事が出来た。
 2000メートル以上差を広げられたヨハンだが、マリーン・アーミーも海流に乗って来て、一気に差を縮めて来た。
 2500メートル地点の時にはとうとう追いつかれてしまった。
 だが、海流の流れは予想以上に速く、マリーン・アーミーも上手く動けないようだった。
 もたもたしてくれたおかげで、1000メートル地点までは上昇出来た。
 それから、フェイントなどを使ってくねくねと動き回り何とかかわし、400メートル地点にまで昇った時、鯨型のマリーン・アーミーに乗り換えて来たルネも追いついてきた。
 今まではルネが居なかったため、単純な動きしか出来なかったマリーン・アーミーだが、ルネが直接参戦した事によって動きが変わった。
 少しずつ、ヨハンの空気の壁をそぎ落としていく…。
 ヨハンを窒息させるつもりなのだろう…
「観念なさい…」
 勝ちを確信したかのように彼を追い詰めていくルネ…。
 トドメとばかりに鯨型のマリーン・アーミーの口から人魚型のマリーン・アーミーを数体出してきた。
 それでも何とかかわし水深200メートルまで逃げ切った時、天の助けか網が仕掛けてあり、それにマリーン・アーミー達が引っ掛かったのだ。
 それに、魚雷もいくつか発射されていて、マリーン・アーミーにダメージを与えていく…。
 網や魚雷を用意したのは地元の漁師さん達だった。
 海域を好き勝手してきたルネを好ましく思っていなかった彼らがヨハンのために罠を仕掛けてくれていたのだ。
「ルネに見つかったら200メートルまで逃げてこい…」
 漁師さん達が潜る前に言っていた意味がやっと解った。
 ヨハンにあって、所有者達に無いもの…
 それは人と人との繋がりだった。
 ヨハンは人との関係を大事に考えて行動していた。
 だから、助けてくれる人が時折、現れたりするのだ。
「クソ共が…」
 ルネが悪態をつく…。
 まるで、本性を現したかのような醜い顔だった。
 ヨハンは無事に海上まで上がって来た。
 息を整え、さぁ反撃だ。


12 ラスト・ステージ…最後のアイテム


 海上に着いたヨハンが目にしたのは島にでんと止まっている山ほどもある巨鳥だった。
ズア001話11 その巨鳥の額には最後のアイテムが…
 0番のズアを解放するためのラスト・ステージ…
 それは巨鳥を追って額のアイテムを取ると言う事である。
 巨鳥が飛び立つ。
 ルネ達は気になるが、相手もしていられない。
 このままでは巨鳥を見失うからだ。
 最後のアイテムを巡る追いかけっこが始まった。
 ヨハンはそのまま巨鳥を追いかける。
「待て、逃げるな!」
 ルネが追いかけて来る。
 だが、9つ目のアイテムを手にして空を飛べる様になったヨハンのスピードは遙かに速く、あっという間にルネを振り切ってしまった。
「そ、そんな、カインに…カインに殺される…」
 任務の失敗により、己の命を心配するルネ…
「お困りのようだな、お嬢さん…」
 それをボートの上から声をかける少年がいた。
 オートマタを破壊されたのを知ってそれを破壊したヨハンを追ってきたアランだった。
「あんたは?」
「俺はアラン、58番の所有者だ。87番の領域も持っている…俺はあいつのように正義感ぶった男が嫌いでね…協力してくれるなら助けてやってもいいんだが…」
「へぇ…面白そう…聞かせてくれる?」
「話が早い…」
 ルネはアランにキスをする。
ズア001話12 ルネはカインからアランに乗り換える算段を始めた。
 悪人同士の繋がりなど、この程度のものだった。
 利害関係で、簡単に裏切り、寝返るような事は日常茶飯事的に起きうる事なのだ。

 一方、巨鳥を追うヨハンは焦っていた。
 巨鳥は彼がスピードを上げれば上げただけ、スピードを増すのだ。
 追っても追っても、一定の距離を保ったまま追いつけない。
 そうこうしている内に、出回っている手配書によって、ヨハンが0番のズアを手にする目前までいっている事を知った他の所有者達がこぞって刺客を送ってきた。
 あわよくば、ヨハンを始末して、彼からアイテムを取り上げて0番の力を自分達のものにしようともくろんでいるのだ。
 空飛ぶエイの様なメカ、空中要塞、戦闘機、鳥形ロボット、UFOのような物体、ロボットドラゴン…様々な空中戦用のロボットがヨハンを追ってくる。
 巨鳥をヨハンが追い、ヨハンを刺客達が追うという追いかけっこが続いた。
 無数の追ってに対して、ヨハンは一人だけ…。
 かなり分が悪かった。
「さっさとくたばれや〜」
「死に腐れぇ〜」
「渡せよ、こら〜」
 刺客達の罵声が飛ぶ。
 恐らく、ズアの所有者達ではなく、所有者達に雇われたルネのような立場の刺客達だろう…。
 所有者達は安全な所で様子を伺っているのだ。
 所有者になれずに欲にかられた愚か者達だけが、オリジナルbニいうエサに群がっていた。
 だが、これはヨハンにとっては良くは無いがましな状況ではあった。
 もし、所有者達が本気で乗り出し、グランマスタ級の何かを出してきていたら、ここまで逃げ切れてはいなかっただろう…。
 所有者同士が牽制し合って、切り札でもあるグランマスタ級のなにかを出し惜しみしているこの状況がヨハンにとってはありがたくもあった。
 そうこうしている内に刺客達はお互いに手柄を奪い合うために抗争を始めた。
 その状況が、ヨハンに冷静な判断をさせた。
 何故、巨鳥は逃げ回っているのだろう?
 何故、ヨハンを振り切ってしまわないのだろう?

 そんな事を考えていた。
 そして、ヨハンと差を広げて、ヨハンが追いつくのを待っていた時、巨鳥は何かをしていた事を思い出す。
 何をしていた…?
 思い出せ…
 そして、ヨハンは思い出し、巨鳥に背を向け、元いた場所へ戻って行った。
 それから、最初に巨鳥が止まっていた場所まで行くと巨鳥が穿って出来た穴にアイテムを一つ埋めた。
 埋めてみて空を飛べる事を確認する。
「よし、やっぱりまだ、飛べる…次だ」
 そう言うとヨハンは次の場所でもアイテムを一つ埋め、さらに次の場所、その次の場所へと向かって飛んでいき一つずつアイテムを埋めて行った。
 そして、巨鳥が待っていた所まで来て7つ目のアイテムを埋めて、巨鳥を追って飛んで行った。
 それを見ていた刺客達は…
「マジでぇ?はは、バカだ、あの野郎…」
「わざわざアイテムを埋めていきやがった…」
「俺のもんだ…」
「させねぇよ、俺がいただく」
 争いながらヨハンがアイテムを埋めた場所へ我先にと向かっていった。
 そして、先に着いた刺客が土毎根こそぎ取って…
「やったぁ〜これで、俺も…」
 喜んだ所で次に着いた刺客に刺され絶命した。
 奪った刺客が土の確認をすると中にはアイテムが無かった。
 驚いていると更に次に着いた刺客に刺されて絶命した。
 醜い殺し合いが起きる現場…。
 何故、ヨハンが埋めた場所にアイテムが無いのだろう…
 そのヨハンは8つ目のアイテムを埋めて、巨鳥を追いかけていた。
 ヨハンはシャハラザードの言葉を思い出していた。
 彼女は10のアイテムを集めるとは言ったが、10のアイテムが同時に揃うとは言っていなかった。
 そして、恐らく、この最後のステージは…
 残り一つとなったアイテムでも飛べる事が彼にその推測が正しいものだと確信させていた。
 巨鳥が9カ所目の場所にたどり着き、穴を掘り始めた。
 そして、穴を掘り終わり、飛び立つかと思うと、飛び立たなかった。
 ヨハンを待っているようだ。
 ヨハンは巨鳥が作った穴に深海で取った9つ目のアイテムを埋めた。
 これで、全てのアイテムを放棄した事になる。
 そのヨハンの頭上から最後のアイテムが落ちてきた。
 ついに手にするヨハン。
 ヨハンが最後のアイテムを手にしたのを確認した巨鳥はまた飛び立った。
 最後の10カ所目の穴を掘りに。
 巨鳥は意味無く飛んでいたのでは無かった。
 10のアイテムで魔法陣を描く様に穴を掘るために各地に飛んでいたのだ。
 ヨハンは巨鳥を追って最後のアイテムを埋める場所へと急いだ。


13 オリジナルbフズア出現


「させないよ」
 最後の地に向かうヨハンを待ちかまえていたのはカインの乗るグランマスタ、ブラック・ジュエルだった。
ズア001話13 カインは途中でヨハンが完成させようとしている行動に気付き、グランマスタを用いて邪魔をしに来たのだ。
 巨鳥は穴を掘り終えている。
 後ちょっとなのに…。
 悔しさに顔を歪める。
 だが、巨鳥はカインのグランマスタに襲いかかりだした。
 その隙をついてヨハンは最後の地へとたどり着いて最後のアイテムを埋めた。
 それを確認したかの様に巨鳥はすーっと消えていった。
 カインは急いでその場を離れる。
 得体の知れない力を持つオリジナルbフズアの出現を恐れたからだ。
 ヨハンが埋めた10カ所の穴がそれぞれ光の線でつながれ雲が急激に動き始める。
 何か巨大な力が出現する様な雰囲気だった。
 だが、現れたのは…
「ワン、ワン、ハッハッハッ…」
 小型犬の様な姿をした物体だった。
 金属生命体…の様なものなのだろうか…
 どのように使うかは解らない…
 だが、探し求めていたオリジナルbフ【Zua−ズア】が目の前に…
 彼が手にしたズアによりこれまでのパワーバランスが崩れようとしていた。
 ヨハンは動き出す…
 シャハラザードを助けるために…


登場キャラクター説明


001 ヨハン

ヨハン 本作の主人公。
 おばあちゃん(シャハラザード)から0番のZua-ズアの元を引き継ぎ、追っ手からの逃亡生活をする事になる。













002 シャハラザード(おばあちゃん)

シャハラザード ヨハンのおばあちゃん。
 彼に0番のZua-ズアの元を渡す。
 0番の影響で若く見える。
 エレニアを探すようにヨハンに伝える。












003 ルーカス

ルーカス 元、74番のZua-ズアの所有者。
 二十歳を超えてしまったため、所有する資格を失い、ミケロの使いっ走りとなる。













004 ミケロ

ミケロ 74番のZua-ズアの所有者。他にも25、35、76番のZua-ズアも強奪して所有している。














005 エレア/エレニア?

エレア 湖畔に住む謎の少女。
 エレニア?かも知れない。














006 チャン

チャン 元、56番のZua-ズアの所有者。
 今は改心しレジスタンスに所属する。
 ヨハンを救った。













007 ディアナ

ディアナ エレアと仲の良い97番のZua-ズアの所有者。
 ラストオーダー。














008 アラン

アラン 58番のZua-ズアの所有者。
 87番のZua-ズアも強奪し所有している。
 残虐な性格。
 オートマトンを操った。












009 カイン

カイン ミケロを殺し、74、25、35、76のZua-ズアも所有した69番のZua-ズアの所有者。
 他に12番も所有する。













010 ルネ

ルネ カインの恋人で彼から12番のZua-ズアの所有権を得る。
 が、裏切り、アランとくっつく。
 マリン・アーミーを操る。